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介添えの休憩室にいると、「洗い場のバイトに来た」と女性がたずねてきた。

今日が初日で、どこに行ってよいのかわからないようだった。

更衣室に連れていく間、何気なく身の上話を聞いた。
 

今春、専門学校を卒業し、来月から家を出て生活するという。

一人暮らしに憧れて、なのかと思ったらそうではないようだ。

彼女には中学生と高校生の弟がいて、とても仲が良いのだとか。

けれど小さな家なので、それぞれの部屋がないらしい。

でも、そのことについて弟たちは、一度も文句を言ったことがないのだという。

そろそろ自分の部屋が欲しいだろう、と、自分の就職を期に、家を出る決意をしたそうだ。

家族が大好きで離れたくないけれど、でもそれがいいと自分で決めたと言っていた。
 

へえ~!と、私は立ち止まってまじまじと彼女の顔を見た。

やっと21歳になる、とは思えないほど、しっかりとした瞳をした子だった。
 

そして、親には大借金をしているから、これから働いて返すのだと、彼女は言った。

専門学校の学費が奨学金では足りなかったらしい。

40歳を過ぎる年まで、毎月返済をするのだそうだ。

自分が40歳になるなんて、まだ想像もできないだろうに。

それと、一人暮らしを始めるための資金。

敷金礼金のほか、家電製品や身の回りの物を買ってもらったと。

そのレシートはすべて取っておいているという。

親は返せとは言わなかった、でもこれから少しずつだけれど返すと自分で決めたと。

そのために、就職する4月まで、とにかく何でもアルバイトして、少しでも貯めたいと思ってここに来た、と彼女は言った。
 

へえ~!!と、私は二度目、立ち止まってまじまじと彼女の顔を見た。

こんな小さい、きゃしゃな体のどこに、これほどまでの強い精神があるのか。

でもけっして悲壮感はなく、いつか、ご両親に自分が決めた約束を果たす日を、ちょっと心待ちにしているような、明るい表情だった。
 

・・・平成の時代に、「おしん」の精神を感じたひとときだった。