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7時半、朝のお朔日参りは清々しい。

ここ、岡山学芸館高校内にある金山八幡宮は、生徒さんが早朝より自主的に集まり境内を掃き清めてくれている。本当に清々しい。

落ち葉一枚、雑草一本生えていない境内にはすでに、先生や生徒さんが約50名ほど集まり、静かにお参りの時を待っていた。
 

参拝後、一人の少女が近づいてきた。

「入学式の日に、着物を着せていただきありがとうございました!」

朝日のようにキラキラした目で、境内のような清々しい若さいっぱいの笑顔で。

言われてその時初めて思い出した。

ああ、あのピンクの訪問着の女の子だ!
 

入学式当日、筝曲部の生徒さん10数名をお着つけしたときは、それはもう戦場のような状況で。

時間内に全員の身支度をするため、お互い挨拶をしている暇もなければ、顔も見ている暇もない。

無事全員送り出したときには、ホッとしすぎて力が抜けた。

可愛い姫たちは、そのあと見事な琴演奏を披露した。

それを聞かせてもらった感動と満足感は、彼女たちからもらった最高のプレゼントだった。

 

そんな状況だったから、一人ひとりの顔を、実は全然覚えていなかった。

髪をアップし、うっすらと紅をさしていたし。

それ以上に、琴演奏の緊張もあってかその朝は、あどけない少女というよりは皆、本当にグッと大人っぽく見えていた。
 

普段の制服姿の顔とは全然違う…と思っていたけれど、笑顔は変わらないんだな。

笑顔で挨拶をされて、あの日の彼女を思い出した。

バタバタしている私に向かって、きちんと「ありがとうございました。行ってきます。」と頭を下げて、にこっと笑って部屋を駆け出していったことを。

 

お参りのあと、美智子参与の挨拶指導の授業に同行させていただいた。

いつものように優しい笑顔で、参与はビシッとおっしゃった。

躾は「押しつけ」だ、と。

正しい挨拶が出来るようになるまで徹底的に教える、と。

それはやがて本人の大切な財産になるのだ、と。
 

朝出会った少女は、その言葉通りだった。

「笑顔の挨拶」は、思い出もこれから先の彼女も、必ずあたたかく守ってくれる財産になる。