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数日前に会った瞳たちは、もう私が何をしに来たのか、わかっている。

6限目のチャイムと同時に、簡単な挨拶を済ませ「太夫道中」の準備のため会場の外に出た。

さあて、私の代わりに入って来たのは・・・?
 

うわー! これが「た・ゆ・う」なのかー!
 

言葉にならないけれど、初めて見た(会った)驚きと、何かを想像をしようとしている若者の思考回路が錯綜し、会場は今まで感じたことのない空気感に満ちていた。

ありていに言えば、どう反応してよいかわからない・・・だったような気もする。

それでも、400年の歴史の目の当たりと、華やかな衣装や髪飾りをつけた葵太夫に目を奪われ、やがて女生徒の中からは悲鳴にも似た感嘆の声が漏れていた。

そんな、500余名に見守られ、司太夫の解説の中、葵太夫による「太夫道中」は静かに会場に入っていった。
 

岡山で初めて、2名の現役太夫による「伝統文化学習」を取り入れていただいた岡山学芸館高等学校・清秀中学校。

地元のテレビ局・メディアは、この様子を太夫の支度からずっと追い、夕方のニュースで放送した。
 

今回の学習は、京都・嶋原から来岡した現役太夫の芸能を見ながら、太夫自身から講義を受ける、というものだ。

それだけではなく、本当に大切だったのは、「太夫道中」に必要なメンバーを生徒から抜擢させていただいたことだった。

禿(かむろ)役に2名の中学一年生の女子。

傘持ち役に高校一年生の男子。

彼は、あと数ヶ月したら約1年間の語学留学に一人海外へ向かう。

この経験を、海外で自信を持って話してほしい。
 

そしてそれを見守るのは、彼らの友人、同級生の皆さん。

伝統や文化とは、日常からは遠い遠いものだと思わず、自分たちの年齢でも担えるものだと、少しでも身近に思ってくれただろうか。

太夫たちは、傘持ち体験や太夫の打掛を羽織る体験を通して、より身近に感じてもらうプログラムを用意してくださっていた。
 

葵太夫の舞、司太夫による講義などが終わり、さあ最後はお楽しみ「お座敷遊び」。

と言うとなんだか学校行事には相応しくないように聞こえるが、これがとにかく生徒に大好評!

「ギッチョンチョン」をしましょう~と司太夫が言う最中から、生徒たちは爆笑している。

そ、そうかあ、言葉の響きがそんなに面白いのね~と、つられて笑う。

教えてもらったギッチョンチョンを全員(先生も)総立ちで踊り、笑顔があふれる中で「伝統文化学習」は終わった。
 

今日の「初めて」の感動を一生忘れないで欲しい。

そして、本当の日本文化に触れたことの自信を持って、世界に羽ばたいて欲しい。

あなたたちなら大丈夫だね。

私は、満面の笑みの生徒を見て、そう確信していた。
 

 

このたびの「伝統文化学習」の準備にご尽力いただきました、岡山学芸館高等学校・清秀中学校の先生方、本当にありがとうございました。

太夫の衣装は約30キロ。それを支度部屋への持ち運びなど、力仕事も嫌な顔一つせずお引き受けいただき、心より感謝申し上げます。
 
 

今回、初めて岡山に降り立った「伝統文化学習」。

どんなに長い伝統にも、「初めて」はある。

これが長い伝統となる「はじめの一歩」となることを願って、私たちは名残惜しく学校をあとにした。