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流暢な日本語で、彼女は突然歌いだした。
それはとても澄んだ美しい声で、日本人よりも上手な発音で日本の歌を楽しそうに歌っている。
彼女にゆかた着つけをしていた私は、思わず手を止めて聞きほれそうになった。
 
「私、歌手なの。日本、大好き。」北欧らしい透き通るような肌の、整った顔で、愛らしく笑う。
日本にも住んでいたことがあるそうで、ゆかたも数回着たことがあるらしい。
外国人には珍しい小柄で、きゃしゃで子供に近いくらいのボディラインは、着付けをする立場から言わせてもらえば、ありがたいほど着せやすかった。
むしろ最近の若い日本女性より着せやすいかも、と思うくらいだ。
 
次にゆかた着つけをさせていただいたのは、アメリカ人男性。
年齢に応じた、というべきか、腹回りに補正をする必要のないボディは、こちらもありがたい着せやすさ。
 
テレビの取材で、ゆかたを着て和食を食べる撮影シーンのため、着つけの依頼をいただいた。
以前、外国人に着つけをする機会をいただいたとき、その背の高さやボディラインをどうカバーするか、いろいろ工夫する勉強をさせてもらったことがある。
今回、依頼をいただいたとき、それなりの準備をしていったのだが・・・。
ひとことで外国人、といっても、当たり前だがいろんな人がいる。
それに、日本が大好きなお二人だからか・・・驚くほどゆかた姿がしっくりくる。
下駄をつっかけ歩く姿は、後ろからみると日本人と何も変わりはなかった。
 
鏡に映るゆかた姿の自分におおはしゃぎ。
この日のためにか、髪の毛を桜色に染めていた彼女は、とても嬉しそうだった。
ひとしきり記念撮影を済ませたころ。
テレビ局のスタッフが、襟元にマイクを付けに来た。
途端に彼らは“プロ”の表情になり、にこやかに礼を言い、着付け室から撮影へと向かっていった。