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成人式当日は、早朝から慌ただしく振袖の着つけが始まる。

晴れ着をまとった姿に、ご本人も親御さまも、とてもウキウキ、満足な表情をされているのを見ると、本当に嬉しくなる。

だが実は、私にとって嬉しい時間は、もうその前からいただいている。

 

当日のお着つけのために、前日までに振袖一式を着つけ会場にお持ち込みいただいている。

それを受け取り、忘れ物がないか道具のすべてをチェックし、最短の時間でお支度を仕上げるため、着せやすいように並べておく。

その支度の時間が、私には限りなく嬉しく楽しい時間だ。

 

袋に入ったままの肌着・足袋。

まっさらの紐・伊達締め。

しつけ糸の付いた振袖。

折り目ひとつない帯。

 

まさにこれから大人になる、といっているような、まっさらづくしの箱を開けた瞬間。

なぜか嬉しくて涙が出そうになる。
 

どんな可愛い新成人が、これを当日まとうのだろうか。

振袖を選んだとき、親御さまやお祖母さまとどんな会話をしたのだろうか。

きっと、これをまとったお嬢さまを見て、皆が目を細め、成長の喜びを噛みしめたことだろう。
 

そこに立ち会うこともなく、そして当日お着つけをするだけの時間しかともに過ごす時間のない私だが、箱を開けるとそんな情景が見えてくる。

 

心を込めてご用意された一つ一つの品の袋を開け、タグを外し、しつけ糸をとる。

本当ならば、彼女を心から慈しみ育てたお母さまがするのが一番、かもしれないが、そのお支度をさせてもらえる嬉しさ。

 
 

当日、眠い目をこすりながら会場に到着する彼女たちに、心から、「おめでとうございます!」と笑顔でお迎えしながら、すでにいただいたシアワセ時間の延長の中、お着付けをさせていただいている。

 
 

今年も成人式が終わった。

さあ明日から、学校へ、また職場へと新成人たちは向かうのだろう。

一日分だけ、大人になって。