真新しい道場に入った美智子先生は、すぐに部活動の生徒を呼び寄せた。
入口そばの棚を指さしている。
そこには彼らの学校カバンが、無造作な状態で詰め込まれていた。
「もっと考えて置きましょう。」
何を言われたのかよくわからない、といった表情の生徒たち。
見た目がよろしくない、と言われているのはわかるようだが、何がいけないのか。
直し方がわからなくて、誰も動かない。
・・・う、うーん、それもよくわかる。
美智子先生は、「ずいぶん昔のことだけど・・・」と話し始めた。
部活動の試合を応援しに行ったときのこと。
対戦校の陣地近くに、低い石垣のようなものが見えた。
近づいてみると、それは対戦校の部員のカバンだった。
ピッチーっと一直線に整然と並んでいるものだったという。
それから半年後、また同じ対戦校となり会場に行った。
その時も、またカバンは見事なまでに整列してきちんと置かれていたという。
「うちの学校が勝てるわけない、と思った。」
美智子先生がそう言った瞬間、生徒たちが「腑に落ちた」顔をした。
真の教育の場を目の当たりにした。
“理解した瞬間” に立ち会った。
すごいな。
ちょっと熱いものが込み上げた。
学芸館高等学校の新しい拠点、「スクールガーデン」は、明日が竣工式。
この中で育つ生徒さんの将来が、本当に楽しみだ。
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