5月29日はゴロ合わせで「呉服の日」と言うそうだ。
呉服やさんの中では、その前後一週間くらい、イベントをされるお店もある。
待ってました、と私は一足の草履をもって訪ねた。
その日は京都から草履の職人さんがお見えになっていた。

「鼻緒のすげ替え」という言葉は、もうほとんど使われなくなっているかもしれない。
鼻緒が傷んだら取り換え、ちょっと違う鼻緒がつけたくなったら選びに行ったり、緩んだら締め直し、そんなことを以前は気軽にしてくださるお店があったものだ。
最近の草履は、草履裏にゴム底がぺたっと貼り付けてあったり、機能性、クッション性など優れているものが増えて、とても歩きやすくなった。
だが、ちょっと傷んだ・・・となったらもう、修理して使うということができない構造になってしまった。

今回私が持ち込んだのは、とっても気に入っている一足。
前坪の色が剥げて、残念ながら履くにはみっともない状態になっていた。しかも、私が住んでいる地域では、鼻緒を交換してくれるお店もなくなってしまい、もう日の目を見ないかと半分あきらめていた。

草履職人さんに見せたところ、さっと数十種類の前坪を出してくれ、「好きな色選んでー」と。
ちょっと驚いた。
おそらく、鼻緒全部を取り換えなければいけないだろうな、と思っていたから。
鼻緒の柄も気に入っていたので、できれば前坪だけを交換したいのだけど、そんな、お金にもならないこと、わざわざ京都から来られているのだし、無理は言えないなと思っていたから。
それを、チラと草履を見てまだ鼻緒は使えると思ったのか、何も言わずに前坪だけを出してくださった。

職人魂!
10分ほどで草履は甦った。
私の大好きな濃赤が、趣ある鼻緒の真ん中で、小さいながらも存在感を見せていた。

何度か私に履くよう勧め、私好みに鼻緒の締め具合を微調整してくださる。
どちらかというとキツめが好きで、親指と人差し指でチョイと挟む程度で履く私には、この調節が何より嬉しい。

失礼ながら、お年を召していらっしゃる職人さんの、この丁寧な技術はいつまで継承されるだろうか。
モノを大切にする魂。
まずはここから継承の努力を続けたい。