高校生たちの眼差しが、急に真面目になった。
おそろいの振袖に、学苑のオリジナルである色んな花結びを締めてもらった彼女たちは、ついさっきまで、互いに写メやメイクを楽しむ、ごく普通の女の子だった。
京セラドームで行われる 鹿児島ファンデー に、私たちは前結び着つけショーとして毎年出演している。
高校生たちは、「花の精」として私たちのバックを飾る。
毎年、募集人数をはるかに超える希望者が集まり、難関をクリアした15名に出場権が与えられる。
振袖を着てドームの舞台に立つ、これは彼女たちにとって憧れと夢の世界のようだ。


本番まであと1時間。
支部長のナレーションで、学苑メンバーがリハーサルを始めると、部屋の中は一気に静まりかえった。
私たちだけではない。
そばで見ている三十の瞳が、輝きを増す。
どんなふうにして着物を着るのか、帯を結ぶのかといった興味と憧れ、いろんなものが含まれたキラキラした女の子の目。

・・・高校生に出演依頼をする意味が、なんとなく分かったような気がした。

きものは、子供の頃から親しむことのできる日本の伝統美。
お正月をはじめ、成長過程の様々な行事に触れるにつれ、日常に伝統文化を取り入れていくことができる。
こうした思い出は、大人になっても、きものを特別な意識でとらえることなく、着ようとする気持ちや機会を増えるきっかけとなる。
そうやって大人になった彼女たちは、母になったとき、我が子にきもの文化を自然な形で伝えていってくれるかもしれない・・・。

その一つのきっかけとして、この着つけショー出演が役に立ってほしい。
世代を超えて、ステキな連鎖がいつまでも続くことを祈りながら、私はキラキラしている彼女たちを見ていた。

ドームいっぱいのお客様の前で、着つけショーは始まった。

お父さんお母さんに連れられ、またおじいちゃんおばあちゃんといっしょに来場した多くの子どもたちが、次々に結ばれていく帯の様を見てくれた。

彼らにとっても、今日ここで見た舞台が、日本の伝統、きものの未来へと繋がる一つのタネとなりますように。