
3年前の七夕、隣家の女の子が我が家を訪ねてきました。
「なっちゃん、ゆかた教えて。」
お祖父さんに、初めて買ってもらったというゆかたを、嬉しそうに抱えて持ってきました。
ゆかたを着せて、というのではなく、自分で着られるようになりたい、という、その気持ちがとても嬉しくて、
小さな頃から見ている彼女が、オトナへの第一歩を踏み出したようで、
そんな大切な一歩に関わらせてもらえて、
なんだか、こちらこそ、と、感謝したい気持ちになりました。
さて荷物を開いてみると。
紐や帯板など、“着る”ための道具が・・・ひとつもなーい!
最近はスーパーでもゆかたを売っていますね。
「ゆかた一式」と書いてあったりするのですが、
・ゆかた
・帯
・下駄
この3点セットだったりします。
女の子のゆかたは、裾を腰でたくし上げて着るので、
どうしても紐は必要なのですが・・・
でも「ゆかた一式」と書いてるのですから、これで着られる!と思っても・・・無理はないですね。
実際には、これだけ必要です。
・肌着
ノリが固いゆかただと、肩やふくらはぎ、足首あたりが肌に当たって擦れ、
肌を痛めることがあります。
肌を守る、という意味と、汗を少しでもゆかたに移さないよう、清潔に着ましょう。
・フェイスタオル2~3枚
胸とウエストの段差を補ったり、このあたりはちょうど帯を結ぶ位置なので、帯に汗じみをつけないように、汗取り用としても使います。
・紐
裾を上げるために 1本(ウエストベルトでも可)、
胸元がはだけないように止める 1本(コーリンベルトでも可)
予備があったら、もう1本
さきほどの、フェイスタオルをウエストに当てるときに使ったり、
ゆかたの丈が長いときに、調整用に使えます。
・伊達締め
胸の紐がズレたりゆるまないよう、止める役目があります。
無くても着ることはできますが、あったほうが綺麗な着姿になります。
・帯板
帯がシワシワにならないように、体の前で帯の間に入れます。
ゴムベルトのついている帯板は、先に体にとめておき、そのあと帯を結びます。
こちらも無くても着ることはできますが、仕上がりがダントツ綺麗です。
また、帯板を入れておくと、汗が帯にしみにくく、帯を痛めません。
ほんとに紐1本、彼女は持っていなかったので、
我が家にあるものをあちこちからかき集めて支度をしました。
すると、そばでその様子を見ていた夫が、なにやらゴソゴソつくっています。
見ると、家にあるもので代用できそうなものを探し出し、彼女にあう大きさにカットした “手作り帯板” をスッと差し出してくれました。
こうして、お道具を揃え、ゆかたレッスンをし、彼女はその夏、お友達とゆかたを楽しんだようです。
そして3年経ったついこの間、彼女のお父さんが、「今年も娘はゆかたを着て出かけたよ。」と教えてくれたのです。
ちょっとオドロキでした。
3年前、一回教えただけなのに、ちゃんと覚えてるの!?
それは彼女のお父さんも驚いたようで。
「よっぽど好きなんじゃな、親が言うのもなんじゃけど、綺麗に着とるんじゃわー。それ見たらな、もう嬉しゅうなってなー。あの時作ってくれた道具も、大切に使うとるんよ。」
少女はいま、高校生になりました。
これから、ゆかたを着て一緒に出かけるお友達も、
そして成人式などを通じて着物に袖を通す機会も、
きっと、どんどんと増えるはず。
もっともっと、ゆかたも着物も、楽しんで欲しいな。
心からそう思いました。
(2016年8月)