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奈良大学文化財学科代19期生 | 着物 | 着付け | 着物好き

あの言葉が今も私を支えてくれる ~着物と恩師との思い出~

奈良大学文化財学科 | 着物 | 着付け | 着物好き

 

恩師に最後に会ったのは、2年前の10月。
奈良大学第19期生の同級会でした。

 

卒業してからもう20年以上。
もう一度、水野先生の講義が聴きたいなあ、というみなの声が上がり、
同級会幹事の一人として
先生との日程調整、その他計画をしました。
奈良・元興寺でそれを実現、
あとは市内の見学と説明までお願いし、
夜の宴会まで楽しく懐かしい時間を過ごしました。

 

数年前まで恩師は、カルチャー講座の講師をされていたので、
毎月来岡していらっしゃって。
講座が終わる頃を見計らってお迎えに行き、
そのあといつも楽しいティータイムを過ごさせていただきました。
いつも着物を着て行ったせいか、
カルチャー職員のかたもすっかり私を覚えてくださり、
今日は熱弁でお話が長引いてますが、もう少しで終わりますからね」
などと声をよくかけてくださったものです。

 

講座が終わり、待合室にいる私を見て恩師はニコッと笑い、
ある日このように言ってくださったことがあります。

 

 「あんたの着物は、清潔な着方やなぁ〜。」

 

 着物の着方に、清潔という言葉は、ちょっと新鮮でした。
綺麗だとかきっちりだとか、そういう言葉はよく使われますが、
恩師が言いたかったことは、それとはちょっと違っているように
感じました。
でもそのときの私は、あまりその意味がよくわからなかくて、
でも、なんとなく褒められたんだという嬉しさで、
ふわっとした喜びに包まれた気分でした。

 

 2年前の同級会は洋服で参加した。
幹事でバタバタするから、とか、
次の日台風が迫っていて悪天候が予想されたから、とか、
何かそんな理由で着物を選ばなかったような記憶があります。
実際に、次の日は大型台風の影響で、帰省すら難しくなり、
一泊二日の同級会は、早朝に解散、早々にみな、帰路に着きました。

 

奈良大学文化財学科 | 着物 | 着付け | 着物好き | 水野正好 | 水野先生

 

 

あの日恩師は私を見て、またいつものようにニコッと笑い、
今日は着物やないんなやー」とおっしゃった。
いつもは着てるんですよ、とお答えすると、
「うんうん、あんたの着方はようわかる。」

 

それが個人的に、そして着物の話をした最後になりました。
今になったら、もう一度着物姿を見ていただきたかった、という思いと、
でも、わかってる、とおっしゃったその言葉に、
力強い応援を今もいただき続けている思いと、いろんな思いが交錯します。

 

その3カ月後突然迎えた、お別れの日。

 

最後に着物でお会いしたのはいつだったか…全然思い出せない。
毎月お会いするのは、私にとってはあまりにも日常で、
あとで振り返ってみたら、
ただの一枚も一緒に写真を撮っていなかった!。 
でも、そんなふうに自然に恩師と会い、
会ってくださっていたことの幸せ、
今さらながら恩師の深さ、大きさに心から感謝しています。

 

告別式では、恩師の奥様、お嬢様、お嫁様の
喪服着つけをさせていただきました(加えてヘアセットも)。
心を込めてお着付けしました。

 

   先生、これが先生が褒めてくださった「清潔な着方」です。
  その言葉を胸に、大切なご家族さまをお着付けさせていただきました。
  いかがですか?

 

これからも、「清潔な着方」が
私の目指す着物姿、と心に刻んで進んでまいります。

 

 恩師とのもう一つの約束。
「2年に一度同級会を開催する」
その2年目がまたやってきました。
先生の懐かしい姿をDVDで見ながら、
追悼会を兼ねた会をする予定です。
(2016年5月)
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