初めは、蕎麦好きのグループで、畑を耕し、蕎麦の実を蒔いて育て、刈り取り、石臼で蕎麦粉にするまで、すべてを手作業でやってました。
一杯の蕎麦を口にするまで、どれだけの時間と労力が必要か。食べ物を得る大変さと、食べられるものがある有り難さを、毎年肌で感じていました。
今は、グループは解散しましたが、蕎麦の師匠の手伝いをし、そのうちの1枚を我が家用にといただいています。
少人数だと、さすがに畑からは大変なので、師匠は蕎麦粉を買ってますが、粉ではなく実で買い、約70㎏を石臼で丁寧に粉にひいています。
師匠といっても、本業は電設会社社長で、従業員さんや取引先さまへ、日頃のお礼に年越し蕎麦を差し上げてます。
蕎麦だけでなく、出汁から丁寧にとったそばつゆも。
大量のカツオと昆布の出汁ガラは、あとでふりかけにしているそうですよ。
人付き合いの良い社長なのと、売り物にはない味の良さで、毎年、欲しいかたが増えて、今年はもう3時から打ち始めても間に合わんのじゃないかと、大変なことになっています。
蕎麦を打つ工程には、大きくわけて三つあります。
蕎麦粉に水を含ませて蕎麦玉にまとめる水回し。

それを平らに平らにと大きな座布団のように伸ばしていく蕎麦打ち。



伸ばしたそばを畳んで、細く切る蕎麦切り。

私は主に水回しがメイン。師匠は蕎麦切りがメイン。その間の、蕎麦打ちは、お互いの作業スピードに合わせて、出来るほうがやります。蕎麦は時間が命なので、そこはちゃちゃっと。
ちなみに昨年は、11時間42枚210人前をうちました。
10時間以上も同じ姿勢で同じことをし続けるには、ええ加減の力のバランスや呼吸が大切だと学びました。
また、ひんやりとした蕎麦粉を指先で転がしていると、とても心が穏やかになり、この一年を静かに振り返る良い時間となっています。
しかし私も嫁の身、何と言っても大晦日ですから、夕方には夫の実家に帰らねばなりません。んでも、18年間、実家の掃除や買い物など、そっちのけだったってことで・・・義母にあまり良い顔されてないのはわかっている・・・(笑)
タイムリミットまでに、今年は何枚打てるかなー。
毎年、自分の中のギネスに挑戦です。
皆さま、今年も大変お世話になりました。ありがとうございました。
良いお年をお迎えください。
《プロフィール》

那須 七都子 (なす なつこ)
KIMONO Terrasse 代表
第25代 岡山きもの文化人 きもの博士
【児島帯】~デニム・畳べり・真田ひもを使った帯~考案
実用新案登録【ひらき帯】考案
きもの文化を未来へ継承することを目的に、「着物を普段着にプロジェクト」を提唱。
普段着には、アイロン・洗濯等「お家メンテ」できる手軽さが必要、と倉敷市児島の繊維に着目。今までの着物や帯になかった素材で、新たな和の美を創る。
【児島帯】は、世界中で愛される普段着の生地代表・デニムと、和室にかかせない畳べり、400年の伝統繊維・真田ひも、の組み合わせ帯。
~背中で“魅せる”大人の半巾帯~ をテーマに、素材の特徴を活かした 「オリジナル帯結び」 を楽しむ着付け教室等を主宰している。