格とTPOを意識しよう
着物の世界で「上級者」と呼ばれる人たちは、色柄の美しさだけでなく、“格”と“TPO(時・場所・場合)”を的確に理解しています。
どんなに美しい着物でも、場にそぐわない装いでは魅力が半減してしまいます。
ここでは、フォーマルからカジュアルまで、格とTPOを踏まえた高度なコーディネートの考え方を解説します。
「格」とは何かを理解する
着物の“格”とは、その装いがどの程度フォーマルであるかを示すものです。
格を理解することで、結婚式やお茶会、観劇など、場にふさわしい装いが自然とできるようになります。

格の種類 着物の例 帯の例 主なシーン
最も高い格 黒留袖・色留袖 袋帯(金・銀糸入り) 結婚式・公式行事
中程度の格 訪問着・付け下げ 袋帯または格の高い名古屋帯 パーティ・お茶会
おしゃれ着 色無地・小紋・紬 名古屋帯・半幅帯 街歩き・観劇・食事会
上級者はこの格を感覚的に使い分け、過不足のない「ちょうど良い格」を選びます。
※黒紋付(喪服と呼ばれることが多い)も、最礼装に位置付けされますが、帯や小物の合わせ方はすべて決まっているため、ここでは取り上げません。
TPOを意識するとはどういうことか
TPOとは「Time(時)」「Place(場所)」「Occasion(場合)」の略。
着物ではこれが特に重要です。
• Time(時):季節や時間帯(昼/夜)によって、色や素材を変える。
• Place(場所):式典、食事会、観劇などの場の格式を考慮する。
• Occasion(場合):主催者か招待客かによっても装いを変える。
たとえば、夜のパーティでは光沢のある帯や小物を取り入れることで華やかさを演出。
一方、お茶席では光沢を抑え、控えめな色で「謙虚な美」を表現します。

「格」と「個性」を両立させる
上級者コーディネートの真髄は、ルールを守りつつ個性を生かすことにあります。
格を守りながら差をつける
• 同じ訪問着でも、帯の柄をモダンな幾何学模様にするだけで現代的に。
• 色無地には、個性的な帯締めを一点投入して個性を引き立てる。
帯で格を調整する
• 格の高い着物でも、あえて名古屋帯を合わせて「程よく軽やか」に。
• 逆に、シンプルな小紋に袋帯を合わせれば「格上げ」した印象に。
上級者は、場に合わせて格を上げ下げする“引き算と足し算の感覚”を持っています。

季節と素材でフォーマル度を調整する
物の素材は、格だけでなく季節感にも直結します。
• 春・秋:縮緬や綸子など、柔らかく上品な素材。
• 夏:絽や紗など、透け感のある涼やかな素材。
• 冬:袷(あわせ)仕立ての重みのある生地で格式を演出。
同じ柄でも、素材を変えることで印象が大きく変わります。
上級者は、季節の空気感までコーディネートに取り入れます。
シーン別の高度なコーディネート例
結婚式(招待客として)
• 着物:訪問着(淡いベージュや薄藤色)
• 帯:金糸入りの袋帯
• 小物:白や銀の帯締めで清楚にまとめる
→ 主張しすぎず、花嫁を引き立てる上品な装い。
観劇や会食
• 着物:小紋や色無地
• 帯:名古屋帯(洒落感のある柄)
• 小物:差し色を使い、程よくモダンに
→ 格を保ちながら、個性と遊び心をプラス。
お茶会
• 着物:色無地または江戸小紋
• 帯:控えめな袋帯や名古屋帯
• 小物:淡色系で統一、光沢を抑える
→ 清潔感と控えめな上品さを重視。

まとめ:格とTPOの“さじ加減”が上級者の証
着物のコーディネートは、単に美しい組み合わせを作るだけではありません。
場にふさわしい格を守りつつ、自分らしい個性をさりげなく表現する――
それこそが上級者の装いです。
格を知り、TPOを読み取り、そこに自分の美意識を重ねること。
それが、和の装いを極めるための最終ステップです。
さらに着物上級者になるために。
「これからの素材」を、あなたの和装に取り入れてみませんか。
昔からの素材や技法で、伝統を重んじてつくられている着物や帯もまだまだありますが、
今はどんどんと技術革新がすすんでいることで、あらたな着物や帯が生まれています。
それを上手に取り入れていくことこそ、上級者への道。

こちらを参考に、素晴らしい着物上級者になってくださいね。





