麻の着物
麻は古来より日本人の暮らしに欠かせない素材であり、特に夏の着物や浴衣に用いられてきました。
清涼感のあるシャリっとした肌触り、通気性と吸湿性の高さが特徴で、盛夏に最も快適な素材といえます。
絹やウールに比べて丈夫で、汗や水にも強い点が魅力です。
しかし、麻特有のシワの出やすさや黄変、保管時の湿気によるトラブルには注意が必要です。

ここでは「着用後のケア」「洗濯」「干し方とアイロン」「保管方法」「日常の注意点」に分けて、麻の着物を長く愛用するためのお手入れ方法を解説します。
着用後のお手入れ
夏に着る麻の着物は、汗をたっぷり吸います。
着用後のお手入れを怠ると、黄ばみやカビの原因となります。
風を通す
脱いだらすぐに着物ハンガーにかけ、風通しの良い日陰で2〜3時間ほど陰干しします。
麻は水分を含みやすい反面、乾燥も早いため、この手間で翌日の臭いや湿気を防げます。
汗ジミや汚れの確認
特に襟元、脇、背中は汗が残りやすい箇所です。
うっすら白っぽくなっていれば塩分が浮き出ている証拠ですので、放置せず洗濯や部分洗いを検討します。
すぐに洗濯できないときは、裏側にタオル等を当ててから、霧吹きで水をかけておきましょう。
タオルに汗や塩分をうつすことで、清潔が保てます。
シワを伸ばす
麻はシワになりやすい素材です。
着用後にハンガーに掛けることで、大きなシワはある程度回復します。
目立つシワには、霧吹きで水をかけておきましょう。
洗濯方法
麻は絹やウールに比べて水に強く、基本的に家庭で洗濯可能です。
日常着や浴衣感覚の麻着物であれば、定期的な洗濯で清潔を保ちましょう。
手洗いを基本に
桶に水を張り、中性洗剤を溶かして押し洗いします。
揉み洗いやこすり洗いは繊維を傷めるため避けましょう。
特に高級な「上布」(越後上布や宮古上布など)は、専門店への依頼が安心です。
洗濯機を使う場合
現代の麻着物は洗濯機対応のものもあります。
ネットに入れ、「手洗いコース」や「ドライコース」を選び、単独で洗うと色移りを防げます。水温は30℃以下が理想です。
漂白剤の使用
白麻の場合は酸素系漂白剤が使えることもありますが、色柄物では変色の原因になるため使用はお勧めしません。
干し方とアイロン
洗濯後の干し方や仕上げで、麻の美しさが決まります。
脱水機を使わず、タオルに挟んで水気をとって干すと、形も崩れません。
陰干し
形を整えたら、着物ハンガーに掛けます。
直射日光に当てると色あせや黄変を招くため、必ず日陰で干します。
アイロン掛け
麻は乾くとシワが定着するため、少し湿り気が残っている状態でアイロンをかけるのが理想です。
高温(180℃前後)で、あて布をして一方向に滑らせます。
スチーム機能を併用すると繊維が落ち着きやすく、自然な光沢も出ます。
完全乾燥
アイロン後もすぐに畳まず、再びハンガーに掛けて完全に乾燥させましょう。
湿気が残るとカビや臭いの原因になります。
保管方法
麻の着物は夏専用であり、長い間タンスに眠ることが多いため、保管方法がとても重要です。
たとう紙に包む
清潔に洗濯・乾燥させた後、たとう紙に包んで収納します。
汗が残ったまま保管すると、翌年取り出した際に黄ばみやシミが出やすいので要注意です。
収納場所
桐のタンスが理想ですが、押入れやクローゼットでも可能です。
除湿剤を併用し、湿気を避ける工夫をしましょう。
虫干し
夏物である麻着物は、使用後に丸洗いしてからしまうのが基本です。
そのうえで、年に1回程度は虫干しを行うと安心です。
晴天が続いた乾燥した日に、半日ほど日陰に吊るして風を通します。
日常の注意点
着用中の工夫で、麻の着物をより長く楽しめます。
・汗取りインナーを着用:直接汗が付着するのを防ぎます。
・食事の際:シミができやすいので、膝掛けやナプキンを用意する。
・雨の日:濡れても乾きやすいですが、泥はねや水シミには注意が必要です。雨コートを着用すると安心です。
・着用シーズン終了後:そのまま仕舞わず、必ず洗ってから保管します。
麻の着物の魅力とお手入れの意義
麻は夏の装いに欠かせない素材であり、その涼やかさと爽快感は他の繊維にはない魅力です。
さらに丈夫で長持ちするため、正しく手入れすれば数十年単位で愛用できます。
ただし、放置すると黄変やカビが出やすく、「洗ってから仕舞う」ことが最大のポイントです。
麻着物は家庭で洗えるという利便性があるからこそ、日常的にお手入れを重ねることで、より気軽に夏の着物生活を楽しめるのです。
まとめ
麻の着物は、夏に最適な爽やかな素材ですが、特有の弱点もあります。
・着用後は必ず風を通し、汗や汚れを確認する。
・基本は手洗い、タオルでの手しぼり。
・陰干しと半乾きでのアイロンでシワを整える。
・保管は必ず洗ってから、たとう紙と除湿剤を併用する。
これらを心掛けるだけで、麻の着物は清涼感を損なわず、長く愛用できます。
夏の暮らしを豊かにする一着として、正しいお手入れを習慣にしましょう。





